[2020/5/2]地域中小製造企業の受注価格適正化のための原価分析と価格交渉ツール提供


製造業革新研究会では、地域の中小製造業を中心に診断・支援活動を行ってきていますが、その多くの支援先企業が下請として発注元から厳しい価格交渉を強いられるなか、コスト上昇分の価格転嫁ができずに収益性の低下に苦しんでいる状況を見てきました。

下請け企業にとっては、材料費や人件費などの上昇を製造原価に価格転嫁することは難しく、発注元へ価格上昇の根拠を上手に伝えなければ価格交渉は成り立ちません。経営者は多忙のため、価格交渉のための情報を集めたり資料を整える時間がなく、価格交渉に臨むタイミングを逸してしまいがちです。また取引先との力関係のため、発注者からの指値での受注を受けざるを得ないものとあきらめていることが多く、これでは、いつまで経っても納品価格は上昇できずに抑えられたままとなります。

そこで、上昇要因が外部的なものであれば、企業努力で対応可能な範囲を超えていることを示し、一方、上昇要因が内部的なものであれば、予め企業努力で対応可能な範囲を設定した上で、それを越えた内容であることを示すことにより、適正な価格転嫁であることを発注元と交渉することができるようになります。なお、適正な価格とは、発注元より求められている品質水準を達成するために必要なコストであるべきで、それを下回る厳しい価格では安定した品質と供給を保証できなくなることを伝えることが重要です。

製造業革新研究会では、研究会メンバーからの照会により、収益性低下に悩む地域下請けメーカーのA社に、診断提言を行うことになりました。

■   製造業における原価分析と収益性改善診断の実施

A社は、産業用および民生用に使われる高品質な設備機器メーカーであり、従業員数約20名、売上 約3億円程度です。典型的な多品種少量生産であり、永年、取引先の要求に応えて製品改良を行ってきた結果、100種類以上の製品バリエーションを抱えており、製品別の収益性管理が課題なのではないかと予想できました。そこでA社の主要製品について、標準原価表、財務諸表(製造原価報告書を含む)、売上台帳などのデータを参照して、原価分析を実施し、製造原価の見える化を行いました。

(図:製品別標準原価管理表(一部))

 

原価分析の結果、収益性低下の主な原因を、

1)多品種化による部品在庫量の増加

2)取引先からの品質改善要求と最低賃金の上昇に伴う検査工程の労務費増大

の2点に絞り込むことができました。

A社では新規受注時に過去の見積に基づいた価格を提示することが長年の習慣となっていたため、在庫量増加や労務費の増大で原価が上昇し、いくつかの製品で原価割れを起こしていることが判明しました。

そこで、A社に対して、2)労務費増大の提案テーマとして、取引先向けの「価格見直しご提案書」のドラフトを作成し提供しました。

(図:価格交渉提案書ドラフト(一部))。

この提案書では、取引先の要請に基づいた在庫量の増加や東京都の最低賃金の上昇データを用いて、客観的に製造原価が上昇していることを説明し、販売価格を見直したいことを訴求するものとしました。

A社の経営者は、過去に決めた製造原価が現在は大きく乖離してしまっている状況を再認識し、その後、その資料を活用して複数の取引先との価格交渉に取り組んでいただいています。

 

【製造業革新研究会】

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